目標・計画
急ぎの仕事に追われるとき、何を先にする?
アイゼンハワー・マトリクスEisenhower Matrix
緊急かどうかと重要かどうかを別々の軸にして、仕事を4つの区画に分けて優先順位を考える型。
30秒でわかる
何に使うか
急ぎの仕事に追われて、重要だが急がない仕事が後回しになっているときに、時間の使い方を見直すのに使う。チームの業務の棚卸しにも使われている。
根拠はあるか
弱い。人が見かけだけ急ぎの作業に引っぱられることは実験で確かめられているが、今回確認できた範囲では、マトリクスを使うと成果が上がるという検証は見つからない。
どう使うか
先に自分の目標を書いてから仕事を4つに分け、重要だが急がない仕事の時間を予定表に入れる。チームで使うときは業務を付箋に1件ずつ書き出して貼り、重要でも緊急でもない業務から廃止や簡略化を考える。
- 「緊急」と「重要」は別物、と考えて仕事を4つに分ける型。少なくともコヴィー『7つの習慣』(1989年)には4象限の「時間管理のマトリックス」がある。アイゼンハワー本人が図を使った証拠は見つかっていない。7
- アイゼンハワーは1954年の演説で「緊急なことと重要なこと」の言葉を紹介したが、名前の分からない大学学長の言葉として引用しただけ。本人が4象限の図を使った証拠は見つかっていない。6
- 根拠は弱い。人が「見かけだけ急ぎの作業」に引っ張られることは実験で確かめられている(2018年)が、マトリクスを使えば成果が上がるという検証は見当たらない。1
- 「実行・計画・任せる・捨てる」の4動詞は後から付いた整理。コヴィーの要点は「第2領域(重要だが急がないこと)に先に時間を確保する」こと。7
- 使う前に自分の目標を書く。そうしないと全部が「重要」になる。分類して終わりにせず、第2領域の時間を予定表に入れて初めて意味がある。
手順と記入例は準備中です。上の「どう使うか」と、「要点」をご覧ください。
評価: 弱(狙っている偏りは実験で確認されているが、マトリクスを使うと成果が上がるという検証は見つからない)。
- 関連する実験: Zhu, Yang & Hsee (2018) "The Mere Urgency Effect", *Journal of Consumer Research* 45(3), 673–690, DOI 10.1093/jcr/ucy008。OUP の論文ページで要旨を確認。5つの実験で、見かけだけ緊急な(期限があるように見える)作業を、報酬が客観的に大きい重要な作業より選んでしまう傾向を示した。要旨では「緊急性の追求そのものに魅力がある」と結論している。忙しいと感じている人ほど強い、選ぶ瞬間に報酬を思い出させると弱まる、という調整要因は大学の広報記事(JHU Hub、403で未開封)と業界誌の要約経由で、論文本文では未確認。12
- 注意: この研究は「緊急なものに引っ張られる」という問題を測ったもので、マトリクスで分類すれば直る、という検証ではない。
- マトリクス自体の比較実験・メタ分析: 検索では見つからなかった(未確認)。実務の型として広く普及しているが、効果は事例と解説が中心。
- 限界: 「重要」の判定が主観に依存するので、自分の目標を先に決めていないと全部が重要に入る。分類しただけで終わりやすい(広島県資料も「分析結果を実行できるか」で成果が決まると注意している)。3
うまくいかなかった例と批判
① 組織自身が使ったと公表した例(数えるのはここだけ)
- なし(確認できた範囲で)。組織が「自分たちが使った」と公言し、結果まで書いた一次資料は見つけられなかった(未確認)。
② 研究・評価として公表された試行/研究報告における実施例
- なし(確認できた範囲で)。
③ 近縁実践・参考例(原典との対応未確認)
- なし(確認できた範囲で)。
④ 手引き・解説(使用実績ではない)
- 手順の推奨(広島県の手引きなど)は、下の「活用ガイド」節に分けて載せた。
まとめ: 組織自身が使ったと公表した例は「なし」。研究・評価としての試行、近縁実践も確認できなかった。広島県の手引きなどは「活用ガイド」節(使用実績ではない)。
使い方の手引き(使用実績ではない)
- 広島県(働き方改革の手引き)/発行年は資料上で未確認/『働き方改革取組マニュアル・事例集「取組アイデア編」』p.13 3 /「重要度・緊急度のマトリクス分析」の標準手順を県として公開(主要メンバーで業務を付箋に1枚1件で書き出し、4ブロックに貼る→緊急度の高い業務が一部の人に偏っていないか、特定の領域に偏っていないかを確認→まず削減対象〈重要でも緊急でもない〉を廃止・簡略化。上司と部下で重要度の認識がずれていないか注意)。/結果: 同じページに載っている企業事例(株式会社体育社)は ABC分析の事例で、マトリクスの使用事例ではない。県による手順の推奨であって、特定組織の使用実績ではない。
- 海外: 企業の公式ブログで「自社で使っている」と明言した例は、今回の検索範囲では見つからなかった。ツール会社(Todoist、Asana、Miro、Atlassian など)の解説・テンプレートは多数あるが、いずれも販売・解説目的で、使用実績の報告ではないため採用しない。
- Inc. の記事で、アイゼンハワー大統領図書館のアーキビストが彼の決定(1957年のアーカンソー州兵の連邦化など)を4象限に分類したという話がある(検索結果の要約のみ、未開封)。後から当てはめた例で、本人が使った証拠ではないので採用しない。
- 原典(言葉): アイゼンハワー 1954年8月19日の演説記録(UCSB American Presidency Project、英語、無料)。短く、引用の文脈が分かる。
- 原典(図): スティーブン・R・コヴィー『完訳 7つの習慣 人格主義の回復』フランクリン・コヴィー・ジャパン訳、キングベアー出版、2013年8月、ISBN 978-4863940246。書誌は国立国会図書館サーチ等の検索結果経由で、ページは未開封。時間管理のマトリックスは「第3の習慣 最優先事項を優先する」の章(英語版 pp.168–177 付近とされる。FranklinPlanner ブログの題名より)。
- 研究: Zhu, Yang & Hsee (2018) "The Mere Urgency Effect"(英語、JCR)。
原典で確かめたこと
- アイゼンハワーの発言: 1954年8月19日、イリノイ州エバンストン(ノースウェスタン大学構内)での「世界教会協議会 第2回総会」演説。UCSB の American Presidency Project の演説記録を開いて確認した。本文は「I have two kinds of problems, the urgent and the important. The urgent are not important, and the important are never urgent.」。アイゼンハワーはこれを自分の言葉としてではなく、名前を出さない「かつての大学の学長(a former college president)」の言葉として引用している。同じ演説で彼自身は「重要なことに緊急性を少し与える」という趣旨を述べている。6
- 言い回しの変化: Quote Investigator(2014年5月9日)によれば、1954年の記録が確認できる最古の例。よく引用される「重要なことはめったに緊急でなく、緊急なことはめったに重要でない(seldom)」の形は、同年の聞き手の回想や、1962年の小説、1973年・1975年の新聞記事など後の伝聞で広まった。同サイトは「アイゼンハワーがこの手法(マトリクス)を使っていたかは分からない」としている。4
- 誰の言葉か: 演説の発言者と同じ場にいたノースウェスタン大学学長 J. Roscoe Miller の言葉だとする解説もあるが、Quote Investigator は「Miller は現職の学長で『かつての学長』ではない」として、この読みに否定的(検索結果の要約経由。該当箇所は本文で未精読)。元の発言者は不明とするのが安全。4
- 4象限の図(マトリクス): アイゼンハワー本人が図を描いた、または使ったという一次資料は見つからなかった(未確認)。少なくとも Stephen R. Covey『The 7 Habits of Highly Effective People』(1989年)には、4象限の「時間管理のマトリックス(Time Management Matrix)」がある。誰が最初に図にしたかは未確認。FranklinPlanner の公式ブログ(同書の読書会記事、2025年2月)で、第1領域=緊急かつ重要(危機、差し迫った問題)、第2領域=緊急でないが重要(関係づくり、長期計画、ミッション・ステートメント、運動、準備)、第3領域=緊急だが重要でない(割り込み、他人の優先事項)、第4領域=どちらでもない(時間の浪費)、「第2領域が効果的な自己管理の核心」を確認した。このブログ記事にはアイゼンハワーへの言及はない。Covey の原著本文で Eisenhower に触れているかは未確認。1989年の出版年は自分の知識で、一次ページでは未確認。7
- 「実行・計画・任せる・削除(Do / Decide(Schedule) / Delegate / Delete)」の4動詞: 出所を特定できなかった(未確認)。Covey の第3領域の説明は「割り込み・他人の優先事項」で、「任せる」と決めているわけではない。後年の解説やツール会社による整理とみられる。7
出典
- academic.oup.com/jcr/article/45/3/673/4925393 ↩
- hub.jhu.edu/2018/05/31/meeting-deadlines-time-management-behaviors/業界誌の要 ↩
- www.pref.hiroshima.lg.jp/uploaded/attachment/593148.pdf ↩
- quoteinvestigator.com/2014/05/09/urgent/ ↩
- bigthink.com/the-learning-curve/why-the-eisenhower-matrix-is-a-fantastic ↩
- www.presidency.ucsb.edu/documents/address-the-second-assembly-the-world- ↩
- blog.franklinplanner.com/intro-to-habit-3-the-time-matrix-pg-168-177/ ↩
各ページは確認日の時点で開けた資料にもとづきます。根拠の強さの決め方